梅田芸術劇場シアタードラマシティ公演『不滅の棘』を観てきました!
祝!我らが愛ちゃん、ドラマシティ初主演!
『不滅の棘』の初演は2003年、花組で上演されました。カレル・チャペックの戯曲「マクロプロス事件」をもとに舞台化された本公演、主演は当時の花組トップスター春野寿美礼様です(ちなみに我がご贔屓の朝夏まなと様はこの頃花組配属でしたが、愛音羽麗様主演のバウホール公演『おーい春風さん』に出演中で『不滅の棘』には出ておられません)。
この度新生宙組で『不滅の棘』が再演されることとなり、その主演に選ばれたのは宙組男役スター愛月ひかる様。 舞台映えする体躯、迫力、そして華やかなスターオーラ…全てを兼ね備えた、宙組期待のスター様です。 宙組ファンはみーんな愛ちゃんのことが大好き!。ドラマシティ、そして東上公演の初主演が決まったときはどれほど嬉しかったことでしょう!。 改めまして…愛ちゃん、ドラマシティ初主演本当におめでとうございます!。
ABOUT 『不滅の棘』
STORY
原作/カレル・チャペック
翻訳/田才 益夫(八月舎刊「マクロプロス事件」より)
脚本・演出/木村 信司
1603年、ギリシャ・クレタ島。医師ヒエロニムス・マクロプロスは不死の秘薬と偽り、国王ルドルフ2世を欺いた。王の差し向けた刺客に襲われた彼は、死の間際に息子エリィにある事実を告げる。「お前に飲ませた薬だけが本物の不死の薬だ」と…。
1933年、プラハ。四代前から引き継いだ、百年に及ぶ裁判の原告であるフリーダ・ムハは苛立ちを露わにしていた。弁護士コレナティの息子アルベルトの、なぜ殊更に訴訟を急ぐのかとの問いにフリーダは答える。「命は短い。だからお金が欲しいの」と。
そこへ突然、公演の為にプラハに滞在中の有名歌手エロール・マックスウェルが現れる。呆気にとられる一同をよそに、エロールはフリーダの裁判に興味を示す。彼に請われ、コレナティが事件の経緯を説明すると、エロールは百年も前の事件についての有力な情報を次々に明かしだす。そんな彼の様子にアルベルトは違和感を感じるが、フリーダは裁判を勝訴に導く情報に夢中になる。ついにエロールは、証拠を欲しがるコレナティに「証拠なら訴訟相手のプルス男爵邸にある。今夜、それを盗みに行こう」とこともなげに言い放つ。なぜここまで協力してくれるのかと問うフリーダに、エロールは「お前には幸せになって欲しい」とだけ答えるのだった。
プルス男爵邸には未亡人タチアナと、酒に溺れる毎日を送る息子のハンス、そんな兄を心配する心優しい妹クリスティーナが暮らしていた。エロールたちは邸に忍び込むが、運悪くクリスティーナに気付かれてしまう。エロールは取り乱したクリスティーナをなんとかなだめようとするが、ついに彼女はエロールに向けて発砲。背中に銃弾を受けたエロールは傷口を押さえながらも、クリスティーナに明日の自分の公演に必ず来るよう約束し、暗闇に消えていった。
翌日午後八時。すでに公演の幕は開いていた。しかし肝心のエロールの姿がまだ見えない。彼の身を案じるフリーダたち。一方、クリスティーナとタチアナも、同じく公演の行方を見守っていた。はたして彼は無事なのか。それとも…。
舞台上でエロールを称える歌が最高潮に達した時ーーー何事もなかったかのように、悠然と微笑みながらエロールが現れ歌う。「スターは必ず蘇るのさ」と。
百年前の事件を詳細に知り、銃撃された傷すらたちどころに癒えてしまう。一体エロールとは何者なのか。何のためにフリーダの前に現れたのか。やがて事件は不穏な様相を呈していく…。
『不滅の棘』プログラムより
再演ものということで予習も可能だったのですが、ここはあえてフレッシュな気持ちで観たい思い、 事前情報は入れずに観劇に挑みました。知っていたことは以下の通り。
- 再演ものであること(初演の主演は春野寿美礼さん)
- とにかく白い
- はべらかし愛ちゃん
- 血?
結果、最後までドキドキハラハラ、楽しく観ることができ大変満足しました。
芝居達者な役者揃い! 注目のキャスト
『不滅の棘』メインキャストは以下の通りです。
エリィ・マクロプロス/
エリィ・マック・グレゴル(宮廷のお抱え歌手)/
エロール・マックスウェル(公演の為プラハに滞在中の有名歌手)…愛月ひかる
フリーダ・プルス(男爵令嬢。エリィと愛し合う。一八二五年に死亡)/
フリーダ・ムハ(百年前から続く「プルス事件」裁判の原告)…遥羽らら
カメリア(謎の老女)…美風舞良
タチアナ(プルス男爵未亡人。フリーダの訴訟相手)…純矢ちとせ
アルベルト(弁護士コレナティの息子。フリーダに想いを寄せている)…澄輝さやと
コレナティ(「プルス事件」裁判の弁護士)…凛城きら
ハンス(タチアナの息子)…留依蒔世
クリスティーナ(タチアナの娘)…華妃まいあ
『不滅の棘』 プログラムより
現在新生宙組は新宙組トップスター真風涼帆様率いる『WEST SIDE STORY』チームと、愛ちゃん率いる『不滅の棘』チームの二手に分かれて公演しています。
キャストの振り分けが発表された際に思ったことは、ブロードウェイミュージカルである『WEST SIDE STORY』には歌やダンスに定評のあるスター様が多く振り分けられているのに対し、『不滅の棘』にはお芝居の上手いスター様が多い、ということ。もちろん皆さま歌もダンスもお芝居もどちらも上手いので、どちらかといえば…というお話ですが。
実際に観劇するとやはりキャスト一人一人に存在感があり、芝居のぶつかり合いは大変見応えがありました。
冒頭から包み込まれる、白の世界
噂通り、出演者のお衣裳は白、舞台のセットも白、小道具も白。白、白、白…冒頭から『不滅の棘』の白の世界に引き込まれます。 白、といっても純白とかピュアなイメージの白ではなく、どちらかといえば無機質な白、というか、どことなく寂しさを感じる白だと 思いました。エロールの人生を思うとその寂し気な白という最初に感じたイメージは当たっていたかな。
愛月ひかる様 着実に積み重ねてきた努力を思う
センターに立つに相応しい、愛ちゃんのスター性
愛月ひかるというスターは凄い。男役になるために生まれてこられたような長身に見合う逞しい体躯、宝塚の生徒らしい上品な美しさ。舞台のセンターに立つ愛ちゃんは男役娘役問わず誰と並んでも「この人が主役だ」と、瞬時に目が引き付けられるオーラを常に纏っておられました。
愛ちゃん演じるエロールはチケット完売必須の有名歌手ということで、常にスター然とした華やかな衣装で登場します。全身白のボリュームのあるファーコートやバスローブ、ハットなど…エロールという役はこれらのアイテムをさらりと着こなして様になる、完璧にカッコいい男役でないと成立しない役です。愛ちゃんは立ち姿や所作も含めて文句なしのエロールでした。常に美女たちを周りに侍らせているエロールですが、そんな姿も唖然となるくらい似合い過ぎている!。
愛ちゃんがいかに真ん中に立つ男役として素晴らしい逸材かということについてはいくら語っても語り切れません。
永遠の世界を漂う青年の心情を繊細に表現
愛ちゃんと言えばここ最近アクの強い役が多かったですね。『TOP HAT』のベディーニから始まり『エリザベート』のルキーニ、『王妃の館』の寛ちゃんに『神々の土地』ラスプーチンまで…。正統派な美形さんによくぞここまで特殊な役ばかりきたものだと改めて驚きますが、どの役にも全力でぶつかり、悩みながらも一つ一つ乗り越えてこられた愛ちゃん。
そしてようやくやってきた『不滅の棘』の主役エロール役。様々な役を自分の物にした役幅の広い男役さんだからこそ説得力のある、ただ美しいだけじゃない繊細な心の動きや胸の内に抱えた深い想いを丁寧に演じておられました。
特に心に残ったのは以下の場面です。
一幕、コレナティがエロールにプルス事件の概要を説明する場面。悠然とソファーに腰かけていたエロールですが、コレナティが100年前に亡くなった男爵令嬢フリーダの話を始めると、その表情に微かな変化が。
「彼女は死んだのか?」
「え?」
「もう死んだのかと訊いた」
無情に響く「そりゃあ100年以上も昔のことですから」というコレナティの言葉に、虚ろな光がよぎる愛ちゃんエロールの瞳が印象的でした。現実を受け止めているようで受け止めきれず、彼はこの百年もの間ずっとフリーダを探していたのでしょうか。そんな切ない思いが胸を掠めるような愛ちゃんの表情でした。
もう一つは二幕のラスト、エロールの秘密が暴かれる場面。
私は再び薬を得た。
だがもう、疲れ果てた。
だがもう、うんざりだ…。
このセリフの後、周りに立ちすくんでいる人々に向かって「私の目にお前たちがどれだけ幸せに見えるか」と訴えるのですが、愛ちゃんのエロールは「うんざり」というより心底寂しそうで、計り知れない程の哀しみと虚しさにほとほと疲れ切っているようでした。
この人はずっと寂しかったのだな、と。だからフリーダと出会った時、そして彼女との子供が生まれた時、この幸せが永遠に続けばいいと思って彼女に不死の薬の調合法を渡したのではないでしょうか。これから永遠に続いていく長い道のりも、彼女と子供と…三人で過ごすことが出来ればどれほど幸せだろうかと願って。
ですがフリーダは彼の元から去ってしまいます。不死の薬の調合法とともに。「彼の人生を終わらせること」こそ彼女が望んだこと、自分が示すことが出来る精一杯の愛だったのかもしれませんが、愛する人が何も言わずに自分の前から消え去った時、いったいどれほどの絶望がエロールを襲った事でしょう。
愛ちゃんエロールが涙を流しながら歌う姿を見ていると、何百年経って姿が変わっても「命を返して!」と叫んでいた少年エリィの姿がそこに見え隠れし、あまりに彼が可哀想で可哀想で…仕方ありませんでした。
お芝居の世界観を崩さないシンプルなフィナーレ
宝塚の舞台なのでフィナーレはさぞや華やかなのだろうと期待していたのですが、『不滅の棘』は燕尾での群舞もヒロインとのデュエットダンスもなくシンプルな終焉でした。
それが物足りないか、と言われると決してそんなことはなく、白い衣装に身を包んだキャストの皆様が一列に並ばれる姿は壮観でしたし、最後に登場された愛ちゃんはお芝居の終わりそのままの緊張感ある表情をされていて、その勇姿に客席中から大きな拍手が沸き起こりました。
最後は愛ちゃんを中心にキャストの皆様が「バンバンバン♪」と振り付きで歌ってくださり大変盛り上がりました!。ご挨拶では愛ちゃんがこの公演の前日に開幕した『WEST SIDE STORY』のことにも触れ、「宙組パワーで頑張ります!」と締めておられました。素の愛ちゃんの声は聞き慣れた可愛い声で、このギャップが素敵だな♡と改めて思いました。
…大変!愛ちゃんについて語っていたらはやくも論文に!汗 『不滅の棘』は他のスター様のお芝居も本当に素晴らしかったので、また別記事に書こうと思います。
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